溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。


~っお父さんのばか!!



ぐっとこらえ,地面を睨む。



「ほんと,仲いいよね」



他人事な凪は,くすくすと声をあげた。

性格に似合わずお母さんがはしゃいでいた理由なんて1つしかない。



「お父さんとデートかな,やっぱり」



それしかないと置き換えてもいい。

お父さんは仕事人間,というよりはお人好しで,ほとんど纏まった時間を取ることが出来ない。

し,楽しそうなので咎める人もいない。

だからお父さんが大好きなお母さんと,お母さんが大好きなお父さんは時間が出来るとすぐ消える。

ぶわっと沸き上がる怒気。

そんな私の様子を察した凪は,両手で私の頬をぎゅむっと潰した。

いたいよ,なぎ。

怒気は一旦しまいこむ。

起こっても仕方ないから。

でも,でも。

じゃあ,私は!?

そうなるわけで。

私は凪の手前,無表情のまま内心憤慨した。

むむむと眉が寄る。

またあんなに楽しそうなお土産話を聞けと?

悔しい! 寂しい! 羨ましい! 約束までしたのに置いていかれた!

行きたかったのに……!

はたと我に返り,私は焦る。

じゃあ,私は……?

繰り返すその言葉の意味も,もう違ってきた。



「ねぇなぎ……私,誰にも預けられなかったんだけど……どうしたらいいの……?」
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