溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。





この関係の始まりを,どことするには少し難しい。

僕が小4の時? 

小6の時?

それとも……

1番古いきっかけは,あの些細な出来事だと思う。



『わたし,凪と結婚する!!!』




無邪気で本気な真理の言葉を聞いた両親たちが



『じゃあそれまで2人は婚約者になるのね。小さな小さな凪のお嫁さん?』



と真理をからかっただけ。



『ねぇ凪。婚約者って何?』



それを真理が覚えてて,僕はその頃にはもう,真理がただの近所の可愛い女の子では無くなっていて。



『真理まま,真理の事,ほんとに貰ってもいいですか』

『あら,真理? ……あの子が凪くんがいいって,凪くんが真理を大事にしてくれるって言う内は私は反対しないけど?』



まぁなるようになっただけ。

僕がその話を持ち出して。

僕が本気で頷いて,何度も念押ししたのもある。

真理が他人に取られないように。

真理に寄る男を睨み付けて帰ったあの日。

気分よくほくそ笑んだのは忘れもしない。

なのに仲の良かった両親たちが勝手に決めたと思い込んでる。

真理が馬鹿真面目にお母さんに報告したとして,きっときょとんとされるだけ。

結婚前提に付き合っても言いか聞かれたから許可を出しただけなのに,別れましたと報告されるのがおかしな話だからだ。

あぁ僕……

真理に付き合って欲しいって,お嫁さんになってって言ったこと,あったかな……

僕は真理が好き。

真理は僕が,きっと今も好き。

それとももう,今日で嫌われちゃったかな……

意識が微睡みに,溶けていく。
< 175 / 196 >

この作品をシェア

pagetop