溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
仲直り。
婚約者じゃなかったら,もう他人と一緒なんだって。
朝起きて,私はどこかに残っていた自分の甘さを痛感した。
ただ今日は来ないのねと無表情のお母さんに訊かれただけで,動揺した私はごっくんと食パンを喉に詰まらせたりもして。
朝から降る雨粒の数々に,嫌気がさした。
自分のせいだろと頭を打たんとする雨を,傘でシャットアウトして。
悲しみそのものみたいな雨の匂いに,とうとう鼻がつんとした。
凪が,いない。
いつも時間を合わせてまで登校してたのに,いまはいない。
そう何回もなかった,この経験が,あった数回より悲しいのは。
明日もきっと無いって,分かってるから。
1人で登校する湿った朝は,どんよりと暗い涙雲。