溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。

仲直り。



婚約者じゃなかったら,もう他人と一緒なんだって。

朝起きて,私はどこかに残っていた自分の甘さを痛感した。

ただ今日は来ないのねと無表情のお母さんに訊かれただけで,動揺した私はごっくんと食パンを喉に詰まらせたりもして。

朝から降る雨粒の数々に,嫌気がさした。

自分のせいだろと頭を打たんとする雨を,傘でシャットアウトして。

悲しみそのものみたいな雨の匂いに,とうとう鼻がつんとした。

凪が,いない。

いつも時間を合わせてまで登校してたのに,いまはいない。

そう何回もなかった,この経験が,あった数回より悲しいのは。

明日もきっと無いって,分かってるから。

1人で登校する湿った朝は,どんよりと暗い涙雲。
< 176 / 196 >

この作品をシェア

pagetop