溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
でも,凪がその膨らんだ頬をふよんっとつついたので,私は慌てて引っ込めた。
なんでこんな。
気恥ずかしいとか。
私が口を引き結んで下から凪を見上げた時,凪は到底理解の出来ないことを言う。
「大丈夫だよ,真理。僕真理の事任されてるから」
そして,家で家事手伝ってて良かった,と凪は続けた。
「…は?」
私が訝しげに凪を見ると,凪はリビングにある机をちょいちょいと指す。
「…メモ?」
ただのメモ書きと思われたそれは,私への手紙だった。
お母さんらしい,適当な字。
『一泊二日の旅行に行ってくる。高校以来のダブルデートだから真理は連れていけない。真理の事は凪くんに頼んだから迷惑かけないように』