溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
朝食の席,腑に落ちない思いで私はパンにかじりついた。



「全く。朝から何事かと思ったじゃない」



目の前には眉を寄せ,私と同じ朝食を取る母の姿が。

冷たく聞こえる喋り方まで,私とよく似ている。

そしてその隣には私のよく知る彼が当たり前のように座り,にこにこと私を眺めていた。

ほんと,気まずいったら無い。

お母さんが,娘を抱き締めながら隣で寝る男の肩を持つ。



「だって凪が…」



そんな母親の風上にも置けない事をする理由は昔から1つだけ。



「いつもの事じゃない…婚約者なんだし別に困らないでしょ?」



そう。 

私の隣に寝ていた彼…凪が,私と婚約関係にあるからである。

私は諦めて,食器を片しにキッチンへ向かった。

私が決めたんじゃないのに……

そもそも社長令嬢でも令息でも何でもない私たちが,なんで今時婚約なんて……

納得できないもやもやを抱えて,カチャリと食器をシンクに置く。

どうしたら,解消できる?

私は母と凪を見つめた。
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