溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
「凪は…私との婚約,嫌じゃないの?」


それは家を出てすぐの事。

だって,それさえなかったら私達はただの幼馴染みでいられたのに。

視線が当たり前に下がった。

お母さんは私達みたいに,小さい頃にお父さんと婚約していて,今もラブラブだから。

朝から仲良しで,歯を磨いてる間すら油断できない。

気がついたら私なんてお構い無く,堂々とキスしてるんだもん。

何度見ないフリと目をそらし苦笑したことか。

でもそれはそれ。もう時代遅れだ。

そんなお母さんには何言っても仕方ないと知っている私は,凪本人に今一度問いただす。

すると凪は



「僕は真理が好きだから,嫌じゃないよ?」



まるでそう言うことが当たり前みたいに,伸びをしながらそう言う。

今更とでも言うように,私の質問が大したことじゃないみたいに言ってのけた凪。

そんな凪に,私はカッと頭に血が上った。

なんでそんなに……! 

他人事みたいに,振る舞えるの…私は…

そして,しゅゅぅーとその感情は萎んで,やがて悲しみになる。



「真理」



凪が私に片手を差し出した。

私はそれを受け入れるしかなくて,ぎゅっと握る。
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