溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
「ほら,あなた。運転で疲れてるんでしょ? 少し仮眠を取ったら?」

「ん? ああ」



静かに口を開いたお母さんに,お父さんも戸惑いながら同意して階段を上っていく。

が,その前に。



「おやすみ」



私のおでこにキスをした。

そして流れるようにお母さんのもとへ。

はぁ,またか。

私はそれに合わせて凪のもとへ行く。



「しゃがんで」

「真理?」

「いいから!」



少しキツくいうと,凪は従ってくれて,私は有無を言わせない勢いで凪の目を手で覆った。

直後に響くリップ音。

私の行動に戸惑いを見せていた凪も,それを聞いてからは大人しくなった。

もうやだこの家…



「さて,凪くん。ありがとね。もうむこうも帰ってきてるから」


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