溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
お母さんは我が母ながら,表情筋が死滅してしまったかと思うような表情を私に向けた。
やっぱり私,お母さんの子供だわ。
そんなことを思った。
「来なさい」
お母さんはソファーに私を誘って,私もそれに従う。
せめて,おいでとか言えば柔らかく感じるのに。
自分に良く似ている顔を眺めていると,ふいにお母さんが私の頭を自分の肩に寄せる。
ふわりとお母さんの香りがして,でも好きだな,と思った。
「2人の時間をあげようと思って」
いまいち感情の見えない,平坦な声が静かに落とされる。
「2人って?」
「凪くんよ」
さらりと言われたことに,私は頬を染めた。
「何でそんなこと…!」