溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
「凪くんはもう,高校3年生なの」
お母さんの声は,大きくないのにいつも鋭い。
私は少したじろぐ。
「凪くんは,卒業したらどうするのかしら」
お母さんがふっと息を吐くように斜め上をみる。
どこか,懐かしむような雰囲気だった。
子供の頃の凪でも思い出しているのかもしれない。
凪が,卒業したら?
私は想像を巡らせる。
そんなの,考えたこともなければ聞いたこともない。
少し,口元に力が入った。