溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
「俺,千堂(せんどう) 千夏(ちなつ)!」



授業終了の挨拶を終え,脱力した私の前に現れたのは,1人の男子。

元気のいい,クラスメート。

名字は今,初めて知った。

この間ノートを渡してくれたなと,思い出す。

私は千夏くんをゆっくり眺めて,頭を整理した。

な,なに……

ずいっとアップになった顔から,首をすくめて距離をとる。

分かりやすく恐々とした態度に,失礼じゃないかだけが気になった。

この人,おかしい……!

何がって,距離感が。

まともな友達一人いないせいで,心臓が必要以上に鳴っている。



「よろしく! 外園さん!」



ニコリと微笑まれ,ますます混乱する私。

なんで,急に?

私達にはなんの接点も…あ。
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