溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
しん…と全員が口を閉ざして,また私は困ってしまった。

なんとかじゃんけんで数人選び,買い出しにいって貰う。

こんなので大丈夫かな。

意志疎通が,上手く図れない。

説明も軽くしただけで,その後は各々好きに過ごし始めてしまった。



「あれ…? 真理のとこの買い出し,遅くない?」



千夏くんが,ずっと気にしていてくれたのか,不思議そうに言う。

呟くようなその声に,私はしゅんとした。

頼んだ材料は単純で,お店も近い。

なのに,確かに戻ってこない。



「私も丁度思ってて…」



何か,あったのかな…



「あ…! 真理さん,そう言えば材料班寄り道してるよ」

「え」



寄り道?



「どうして?」

「ほら」



見せられたのはスマホの画面。

お互いGPSアプリで繋がっているみたいで,確かに買い出しを頼んだメンバー全員の名前が,地図上の全く関係ない位置にある。
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