溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。


分かるわけ



「分かるわけ,ないよ。したことも…ないのに」 

「してない,僕はされてないししてないよ」

「え……?」



信じて,真理。

そう言った凪の顔もまた,苦しげに歪んでいる。

凪…?

今,凪が嘘をつくなんて思えない。

でも,自分よりも凪を信じられるかって言われたら,分からない。

あんなにハッキリ,棺へ消えていく2人を見た。



「別に,演技だから目を閉じる必要なんてない。適当に顔を近付けたら,目の前に突然起き上がられて」


  
確認するみたいに,凪が自分の右手を見つめる。



「あの人の軽はずみな行動で,クラスの劇を壊すことも出来なかったから。全力で顔を押さえ付けて沈めた」



私が見たのは,凪の背中の方向から。

だから,もしそうだったとしても……
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