桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。
美桜は啓汰をアパートに上げると、温かいお茶を出した。他人に自分の裸を見せるという異常な状況……。美桜は心を落ち着かせるために入れたお茶を口に含み、喉の渇きを潤した。
「啓汰さん。本当に何もしないですか?触るだけですよ」
「うん。玄関の鍵は開けっぱなしにしよう。俺が何かしたらすぐに逃げられるでしょう」
「分かりました」
玄関の施錠を外し、すぐに逃げられるようルートを確保し、近くにスマホを置いた。すぐに電話が出来るよう正悟の表示を出しておく。
「じゃあ、服を脱ぎますから後ろを向いて下さい」
啓汰が後ろを向いたのを確認した美桜は、自分も後ろを向きブラウスのボタンを外す。震える手では、ボタンを外すのに時間がかかってしまった。全部のボタンを外し終わるとブラウスを脱ぎ、ブラのホックを外し床に落とした。それからもう一度ブラウスを羽織ると、前がはだけないように手で掴んだ。
「啓汰さん、良いですよ」
そう言うと啓汰が振り返り、美桜に近づいて来た。美桜は体を震わせながら啓汰を見上げた。
「良いですか?」
「うん」
美桜がブラウスを掴んでいた手を緩めると、ゆっくりと美桜の胸が露わになる。するとガタリと音を立てて啓汰が後ろに下がった。顔を強ばせ、青ざめる啓汰が口元を手で押さえている。
「こんな……」
そう言うと、啓汰は荷物を手に取ると逃げるように玄関へと向かって出て行った。