桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。
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美桜のブラウスのボタンを外しながら、俺の手は小刻みに震えていた。ここで絶対に間違った選択をしてはならない。これ以上、美桜を傷つける事があってはならないのだ。
正悟はブラウスのボタン外し終わると、ブラウスの前をゆっくりと開き、手術痕を確認した。大きな傷ではあるが、きれいな手術痕だった。美桜の中心にある傷を見つめ、俺は優しく微笑む。優しく笑えただろうか?不安に思いながら、そっと美桜の顔を見てみると、驚いたように固まっていた。
美桜を安心させるため、微笑みを絶やさないようにしたまま優しく囁く。
「きれいな傷だ」
固まり続ける美桜の胸の中心に、俺は顔を近づけキスを落とした。ビクリと体を震わせた美桜に向き直り、俺はなるべくゆっくりと自分の思いを語った。
「さくらの心臓がここにあることで美桜が生きられる。さくらが死んでしまった事は悲しいが、美桜が生きられたことに、生きていることに感謝しかない」
俺は包み込む様に美桜の体を抱きしめた。
そんな俺に眉を寄せた美桜がこんな傷のある自分で良いのかと聞いてくる。何を言っているんだ。俺は誰でもない美桜が良いと言うのに。これは分からせないといけないのかもしれない。
それから、まだそんな事を言っているのかと少し困った様に言葉にした後、この傷はもう誰にも見せてはいけないと美桜に約束させる。
これは俺の独占欲だ。
もう誰にも美桜を触らせない。
俺の言葉に、コクコクと首を立てに振る美桜が愛おしくて仕方がない。
「いい子だ」