桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。


「美桜……やさしくする」


 その恐ろしく甘い声に、私の背中はゾクリと震えた。


「ありがとう美桜……好きだよ」


 大好きな声で鼓膜が震え、背中のゾクゾクが止まらない。そんな状態からの耳へのキスは、どんな媚薬よりも私の身体を熱くさせた。リップ音が響くたびに、それに合わせて体を跳ねさせてしまう。

 もう止めてと声に出そうとしたところで、正悟さんが追い打ちを掛ける。


「可愛い」


 止めて!止めて!

 そんな甘い声で囁かないで!

 体が火照って声にならない叫びが脳内で渦巻くと、正悟が首筋に顔を近づけ、私の匂いを嗅いできた。

 それには思わず声が出る。

「正悟さん……匂い嗅いじゃヤダ……」

 あまりの恥ずかしさに目に涙が集まり出す。すると正悟が目を見開きこちらを凝視していた。どうしたのかと潤んだ瞳のまま正悟さんを見つめ返すと、キスをあちこちに落とし始めた。それから正悟さんを受け入れる部分に触れた正悟さんがうれしそうに声を上げた。

「濡れている」

 止めて、言わないで。

 何となく自分でも気づいていた。

 正悟さんに触れられるたびに、キスを落とされるたびに、甘い声で囁かれるたびに、そこが濡れそぼっていくことに。でもそれを声に出して言われるなんて……穴があったら入りたいんですけど!!

 あまりの羞恥に顔を隠し左右に振ってみるが、それに何の意味があるのか。正悟の記憶から消し去りたいが、もう無理なことなのは分かっている。

「言わないで」

 今の美桜にはそれを言うだけで、精一杯だった。







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