桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。
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ナースステーションに白衣を着た正悟と、高津がやって来た。
「みんな、少し時間を頂けるだろうか?」
その声にみんなが手を止め、高津に視線を集めた。
「知っている人もいると思うが、本日からこの心臓外科で働くこととなった樋熊正悟くんだ。俺の後輩で、ドイツで天才心臓医として働いていたところを引き抜いたんだ。無愛想な所もあるが、悪い奴じゃないから仲良くやってくれ。ほら、樋熊あいさつ」
そう言って、高津が正悟の背中をバシンッと叩いた。一歩前に出た正悟は面倒くさそうにポツリと挨拶の言葉を述べた。
「……よろしく」
えっ……それだけ?
皆がそう思った時、高津が正悟の背中をもう一度、バシバシとたたきながら笑った。
「まあ、こんな奴だけど腕は確かだし、頼りになる。皆よろしく頼むよ」
高津にそう言われ、ナースステーションにいたスタッフ達は頭を下げた。