桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。


 医局から出る際に頭を下げ廊下に出ると、美桜は唯人くんの事を思い出していた。唯人くんがこの病院に入院してきたのは2年前、入院してきたばかりの頃は歩行も出来ていたが、現在は一日をベッドの上で過ごしている。少し動いただけでも呼吸が乱れてしまうため、24時間酸素吸入が必要な状態だ。そんな唯人くんの性格は、人見知りがなく、快活で元気いっぱいの男の子だった。入院して来てすぐに、皆の中心的存在へとなっていった。気づけば唯人くんの回りには子供達が集まり笑顔が溢れる。そんな何処にでもいるような子供だと言うのに、彼の心臓だけは皆とは違った。

 唯人くんの病名は拡張型心筋症、この病気は心臓の筋肉の収縮する能力が低下し、左心室が拡張してしまうと言うものだ。地方の病院から心臓移植をするために、この病院に転院し心臓移植待ちをしている。

 現在心臓移植待ちの患者さん人数は全国で732名。脳死判定により移植出来たのが70名。唯人くんが転院してきて2年経っても移植は行われていない。この病院にいる患者さんの中で今、一番心臓移植を必要としているのは彼だろう。唯人くんの家族も一日でも早く心臓移植が行えることを望んでいた。唯人くんの他にもこの病院には心臓移植を必要としているが何人もいる。唯人くんに移植の順番が回ってきても血液型が合わなかったり、サイズが合わなかったりと、心臓が適合し無ければ順番がひっくり返ることもある。











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