桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。
美桜は首を捻りながらも正悟の指示に従い、東の非常階段前で待機していると、PHSの着信音が鳴った。PHSの画面に『樋熊先生』の文字が表示されている。
「はい、坂口です。樋熊先生、非常階段前まで来ましたけど……」
「ああ、それでいい。そこからシャボン玉を飛ばしてみろ」
「えっ……シャボン玉?」
「いいから」
いいからって……。
意味もわからず、美桜は正悟の言うとおりに子供達にシャボン玉を飛ばすように話をした。
「みんな、ここからシャボン玉を飛ばすわよ」
「「「はーーい」」」
子供達がシャボン玉を作り出すと、風に乗って丸い球体が虹色に輝きながら空高くへと飛んでいった。
こんな場所でシャボン玉を飛ばして何があるのかと首を捻る美桜だったが、PHSから聞こえてきた正悟の声に、美桜の背中がゾクリと震えた。
「ああ、良い感じだ」
またこの声だ。
優しく、心に響く。
切なくて懐かしい声にトクリッ、トクリッと胸が高鳴った。
私は知ってる……?
この声は……何処かで……。