桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。
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唯人が病室で瞳を輝かせていた。
「うわーー。すごい。こんなに沢山のシャボン玉……空に吸い込まれていくみたいだ。ね、お母さん。きれいだね」
唯人の隣にいた唯人の母親も、うれしそうにシャボン玉を眺めた。楽しそうに笑う息子を見つめ、唯人の母の瞳に薄らと涙の膜が張った。
シャボン玉を見つめながら唯人の母は願った。
これから先も、この子がずっと笑っていられますように。
どうか、神様お願です。
この子にドナーが見つかりますように。
願いを込めた虹色の球体が、神の元へと届けと願い。唯人の母親は、唯人に気づかれないように、こぼれ落ちる涙を拭った。