桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。
「美桜さん。ちょっと良いかしら?」
「大丈夫ですよ。どうかしましたか?」
優しく答える美桜に、唯人の母親がうれしそうに先ほどの唯人の様子を美桜に話してくれた。
「唯人、今日はとてもうれしそうに笑っていたのよ。すっごくうれしそうに、楽しそうに笑って……。私まで笑顔にしてもらったわ。ありがとうございました」
頭を深々と下げる唯人の母親の声は少し震えていた。唯人くんに残された時間が少ないことを分かっている唯人の母は、少しでも唯人くんの喜ぶことをと、いつも考えていた。そのため、今日のシャボン玉をとても喜んでくれたようだ。それから頭を上げた唯人の母親が話を続ける。
「シャボン玉を見ながらあの子言ったのよ。今日もみんなが笑顔でいてくれて良かったって……。誰も死ななくて良かったって……っ。僕に心臓が届かないってことは、誰も死ななかったって事だよね?これからも誰も死なないといいなって。でもね、私はシャボン玉を見ながら、唯人にドナーが見つかりますようにって願ったの」
それは……。