桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。
美桜は大島さんが呼吸をしやすいように、下顎を上げ、胸を開かせ、気道の確保をする。そこへ、青い顔をした新人の福田が救急カートを持ってやって来た。
救急カートとは、急変対応時に初期対応を迅速に行うため、必要最低限の救急物品、薬品、器材などをまとめて収納した移動可能な台車のことで、患者さんの急変時に持っていくと、大体のものはそろっているという、とても便利で大事な台車である。しかし、使った後はきちんと中の物品を補充しないといけない。次に使用する時、物品が無いなんて、急変時にはとんでもない話しだからだ。そのため、まめにチェックが必要となる。
美桜は救急カートを持ってきてくれた福田にお礼を言った。
「福田さんありがとう」
「美桜さん、私は何をすれば良いですか?」
顔面蒼白で今にも倒れてしまいそうな、新人の福田の様子を見た美桜は、福田を落ち着かせるため深呼吸を促す。
「福田さん大丈夫だから深呼吸して、しっかり酸素を吸ったら私はルートの確保するから、福田さんは点滴の準備をお願い」
美桜はサーフローと呼ばれる針を使って、大島の腕に針を刺した。血が逆流してきたことを確認して福田が用意してくれた点滴とつなげる。美桜のその無駄の無い動きと早さに福田は息を呑む。
「……すごい」
「ほら、ボーッとしないでルートつながったから点滴の滴下を確認して、先生来るわよ」