桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。
そんな感じで少し意識を飛ばしていると、紬に白衣の裾を引っ張られた。
「美桜おねえちゃん。今日外来だって言ってたけど大丈夫なの?」
「えっ……キャーー!そうだった。もう外来の時間?あっ、まだ時間あるけどもう行くね」
美桜は足早に外来へと向かった。
心臓外科外来の扉の前に着き、時計を確認すると外来開始時間の10分前だった。
良かった。間に合った……。
ほっと、美桜は息を吐き出し安堵した。
外来の扉を開け中に入って行くと、正悟が真剣な顔でダブレットの動画を見つめながら手を動かしていた。
何をやっているのかしら?
そっと正悟の後ろからタブレットを覗き込むと、それは心臓の手術映像だった。ドクンドクンと動く心臓にメスを入れ手術用の針と糸を使って縫っていく。
うわーー。
すごい。
あんな風にドクドクと動き続ける心臓に、施術を施すなんて神業だ。真剣な顔でタブレットの動画を見続けているけど、先生は休憩を取ったのかしら?
美桜は入って来た外来の扉を閉めると、隣の外来休憩室にあるポットのお湯を使ってコーヒーを入れた。カップにコーヒーを入れるとソーサーの上に角砂糖を3つ乗せた。