桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。


 *::*

 
「美桜さんて樋熊先生と仲が良いですよね~?」

「はっ?」

 意味深な言い方の福田に、美桜は意味がわからないとばかりに声を出した。

「『はっ?』って、美桜さんと樋熊先生っていつも一緒にいるじゃないですか」

「いつもって……そんなにいつも一緒になんかいないわよ」

「そうですか?樋熊先生って、美桜さんの事ばかり呼ぶ気がするんですけど?だから二人はいつも一緒だなって思ってたんですけど」

 確かに何かにつけて、呼ばれることは多い。しかし、仕事のことで呼ばれるのであって、何があるでもない。

「気のせいよ」

「まあ別に良いですけど……樋熊先生は本物のクマみたいでタイプじゃ無いし」

 クマ……前にも子供達に言われてたっけ……今も大きな体躯の先生が机に突っ伏して寝ている姿が、確かにクマみたいだ。

 そんな話をしていると、目を覚ました正悟がむくりと動き出した。

 わぁーー。

 まるで冬眠から目覚めたクマみたいで、何だか可愛い。

 んん……?

 まって……可愛いって……。

 あれ……?

 トクトクと動き出す鼓動の意味に、美桜は気づき始めていた。それでも思わず、手首に手を添えて脈を取った。

 不整脈は無いわね。

 良かった。

 こんな時、どうしても脈を取ってしまう。

 高鳴る鼓動の意味に気づき始めた美桜は、胸に手を置き唇を噛みしめた。

 美桜ダメよ。

 その気持ちに気づいてはいけない。

 心臓に負担をかけてはいけない。

 私は……。

 私の体には……。



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