桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。
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「美桜さんて樋熊先生と仲が良いですよね~?」
「はっ?」
意味深な言い方の福田に、美桜は意味がわからないとばかりに声を出した。
「『はっ?』って、美桜さんと樋熊先生っていつも一緒にいるじゃないですか」
「いつもって……そんなにいつも一緒になんかいないわよ」
「そうですか?樋熊先生って、美桜さんの事ばかり呼ぶ気がするんですけど?だから二人はいつも一緒だなって思ってたんですけど」
確かに何かにつけて、呼ばれることは多い。しかし、仕事のことで呼ばれるのであって、何があるでもない。
「気のせいよ」
「まあ別に良いですけど……樋熊先生は本物のクマみたいでタイプじゃ無いし」
クマ……前にも子供達に言われてたっけ……今も大きな体躯の先生が机に突っ伏して寝ている姿が、確かにクマみたいだ。
そんな話をしていると、目を覚ました正悟がむくりと動き出した。
わぁーー。
まるで冬眠から目覚めたクマみたいで、何だか可愛い。
んん……?
まって……可愛いって……。
あれ……?
トクトクと動き出す鼓動の意味に、美桜は気づき始めていた。それでも思わず、手首に手を添えて脈を取った。
不整脈は無いわね。
良かった。
こんな時、どうしても脈を取ってしまう。
高鳴る鼓動の意味に気づき始めた美桜は、胸に手を置き唇を噛みしめた。
美桜ダメよ。
その気持ちに気づいてはいけない。
心臓に負担をかけてはいけない。
私は……。
私の体には……。