桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。
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「美桜さん……紬は大丈夫ですか?」
紬が屋上で発作を起こした次の日、陽希が心臓外科病棟のナースステーションにやって来た。
「紬ちゃんなら大丈夫よ。さっきもお昼完食してたから」
「そうですか……」
「紬ちゃんの所に行くんでしょう?」
「…………」
陽希は足下に視線を落としたまま固まった。
陽希はいまだに悩んでいた。
自分は紬に会う資格があるのだろうか?
「ひなちゃん大丈夫よ。ほら、顔を上げて、行ってらっしゃい」
美桜に背中を優しく叩かれた陽希は重たい足を一歩踏み出すと、紬の部屋へと向かって歩き出す。
紬のいる病室の戸を三回ノックすると、中から「どうぞ」と言う、可愛らしい声が聞こえてきた。