桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。
「ひなちゃん……」
その声にピクリと反応して体が跳ねた。何か言わなければと言う焦りから顔を上げると、紬と視線がぶつかる。
昨日はグッタリとした様子の紬だったが、今は顔色も良く、いつも陽希が見てきた紬と変わらない様子だった。
良かった。
苦しそうじゃ無い。
その姿を見ただけで、涙が出そうになった。
陽希は震える唇を噛みしめると、スッと息を吸い込み声を振り絞った。
「紬……私……」
そこまで声を出した時、紬の声と重なった。
「ひなちゃん、ごめんね」
陽希が見つめる先で、頭を下げた紬が涙を流したいた。
どうして紬が謝るの?
謝らなくちゃいけないのは、私の方なのに……。
陽希も謝ろうと口を開こうとしたが、紬が早口で謝罪の続きを始めていた。
「ひなちゃんが悩んでいること知ってたのに、手首の包帯の理由にも気づいてたのに……。私は、自分の事ばっかり言って……私の気持ちを押しつけて、ひなちゃん傷つけちゃった。ごめんね……ごめんなさい」
そうか……紬は知っていたんだ……。
私が自殺未遂した事……死にたいと思っていること。
知っていて、あえて何も聞かずに私の隣にいてくれたんだ。