桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。
*
屋上で優しい春の風を感じながら、美桜は目を閉じた。そして、ここ数日での出来事を思い返していると、後ろから声を掛けられた。
「美桜ちゃん、元気無いね。どうしたの」
そう言ってきたのはマイクだった。
「あの時美桜ちゃん、さくらちゃんの話し聞いてたね?ショックだった?」
さくらちゃん……。
時々樋熊先生が呟いていた名前だ。
コクリと頷いた美桜の頭を優しく撫でながら、マイクがフッと笑ったその時、その手を大きな手が掴んだ。
「触るな」
いつもより低音だが、美桜の胸を高鳴らせる声の持ち主が、マイクの手を掴んでいた。
樋熊先生……。
止めてよ……そういうことしないで……。
また、勘違いしてしまう。
樋熊先生は妹さんを……さくらさんを守りたいだけなんだから。
「何その独占欲?意味が分からないですね。正悟はかわいい美桜ちゃん泣かしてばかりのくせに」
「いつ俺が坂口さんを泣かした……」
マイクの視線で正悟が美桜に視線を移すと、美桜は泣いていた。そこで初めて美桜が泣いていることに気づいた正悟は、慌てながら美桜の顔をのぞき込んで来た。
「坂口さんどうした?」
正悟の鈍感さにマイクが呆れたように溜め息を付いた。
「正悟、何をバカな質問してるの?どうしたじゃ無いね。全部正悟のせいね。そして二人とも思っていることがアル思います。ここでじっくり話し合うと良いね」
ひらひらと手を振りながら、マイクは行ってしまった。
「「…………」」
私達二人は屋上に取り残され、美桜はどうしたらよいのか分からず、無言で俯いていると、正悟が口を開いた。