桜舞う天使の羽~天才心臓外科医に心臓(ハート)を奪われました。
そう思いながらも、正悟のしたいようにさせてしまうのは、惚れた弱み何だろうか。熱くなる頬を隠したくても隠す方法は無く、泣きながら美桜は正悟を見つめた。
すると正悟の喉が「ぐっ……」と、変な音をたてて鳴った。
「そんな顔で見つめられたら、我慢できなくなる」
何の我慢なんだろうかと、美桜はを首をこてんと傾げて見せると、正悟が溜まらないとばかりに、美桜を抱き寄せ撫でていた唇を奪い取った。
何が起こっているのか分からず、美桜は目を閉じてその唇を受け入れる努力をしようと唇を少し開くと、正悟の熱い舌が侵入して来た。自分より厚い舌が口の中を縦横無尽に動き回る。それが上顎を撫でた瞬間、美桜の口から吐息が漏れた。美桜の反応に、ピクリと体を跳ねさせた正悟は、美桜の口内にむさぼりついた。
「せん……せい……んっ……あぁ……どうっ……して」
先生どうしてと、キスの合間になんとか言葉にしていくと、正悟が甘く囁くような声を出した。
「無防備すぎるお前が悪い」
脳髄がしびれるようなその声に、美桜の背筋がゾクリと震えた。怖いわけでも寒いわけでも無いのに震えた背中が今度は熱くなっていく。
はふっと熱のこもった吐息を吐くと、正悟が口角を上げた。
「とろけた顔をしているな。そんな顔のまま病棟に帰すわけにもいかない」
そう言って正悟は強く美桜を抱きしめたまま数分が経過した。その間に美桜も冷静さを取り戻そうとしていたのだが……正悟のキスを思い出すと頭がのぼせたようにポーッとなってしまう。
私は樋熊先生とキスしたんだよね?
これって、どういうこと?
先生は私を通して妹さんを見ていたんじゃ……?
困惑気味に美桜は、それを声にした。
「樋熊先生は私を通して、妹さんを見ていたんですよね?私では無く、妹さんを……」
「そうだな……」
正悟の答えに、悲しみが溢れ出す。
やっぱりそうなんだ。