公爵騎士様は年下令嬢を溺愛する
第12話 婚約をしよう
ルーナとヒューバートの3人で晩餐をしたあと。
ルーナはぬいぐるみを両手で抱えて部屋へと帰って行った。
嬉しそうに笑みをこぼしたのを見ると、ぬいぐるみを贈って良かったとホッとした。
そして、俺とヒューバートはいつものように別室で酒を飲んでいる。
「ヒューバート、ワインを飲むか? ウィスキーもあるぞ。」
「団長のところはタダで高い酒が飲めるからいいですねー。」
ヒューバートは、機嫌よくワインを飲んでいた。
こいつはいつもよく飲む奴だ。
「それにしても、ルーナさんは可愛いですね。磨けば光タイプですよ」
「ルーナを変な目で見るんじゃない」
「普通の意見ですよ」
ウィスキーを片手に氷をカランとさせ、ヒューバートに聞いてみた。
「……ルーナと婚約し、結婚をしようと思うがどう思う。」
「どうとは? 団長がルーナさんに惚れていることですか? それとも結婚も婚約も16歳からじゃないと出来ないのにしようとしてるとか? 犯罪ですよ」
「違う! ルーナの家のことだ!」
「何かあるんですか?」
「よくわからん」
「は? まさか拐って来たんですか?」
「……お前口がよく回るな……」
「暴力反対ですよ!」
ヒューバートに向かい、立ち上がったがヒューバートはソファーの後ろに逃げた。
明日はしごいてやる。
そう思った。
「まぁまぁ! 今はルーナさんの気持ちが一番ですよ! 団長がハッキリするべきです! 家のことは後からでいいじゃないですか!」
ルーナの気持ち?
「よくわからず来たみたいだし、俺のようなオッサンを選ぶか?」
「団長はまだ若いでしょ!」
「今夜話してみるか……」
「夜這いはやめて下さいよー」
「……明日は絶対に鍛練をするぞ……」
ウィスキーを一気に飲み干し部屋に帰ることにした。
ヒューバートを邸に泊め、俺も部屋に帰った。
服を寝る時のTシャツに着替えながら思った。
ルーナに話をするのに酒に酔って言ってもいいのか!?
いやあれしきの酒では全く酔わんが!
……こんな事を考えること自体がおかしい。
今までなかった。
だが寝る前にルーナの顔は見たい。
バルコニーに出るとルーナはいない。
もう寝たのか、と残念な気持ちがよぎる。
ルーナの部屋を窓から覗くと、ルーナはぬいぐるみを抱いてベッドに足をたらし転がっていた。
気に入ってくれたのか?
だが俺は気付いた。
これでは覗きじゃないか!?
俺ともあろうものが!?
その時、ルーナは急にガバッと起き上がった。
俺は驚いた。
敵陣で剣をふるっていた時より驚いたかもしれない。
何故急に起きたんだ!?
俺か!?
俺が殺気でも放っていたか!?
いや、ルーナに対して殺気などない!?
見てただけだ!?
いや、それも変だ!?
そのまま、その場に座り頭を抱えているとルーナがバルコニーに走ってやってきた。
「カイル様、来てくださったのですか?」
ぬいぐるみを抱いたままのルーナは、俺の前にしゃがみ込んだ。
「カイル様?」
「……様子を見に来た」
「私のですか? ……カイル様に会いたくて本当はさっきまで起きてたんです……」
目の前にルーナの顔がある。
いつもは立っているから目の前に顔がくることはない。
思わず、ルーナの手を握ってしまった。
「俺に会いたかったか?」
「……はい……ぬいぐるみのお礼をもう一度言いたくて……」
「俺はルーナに話がある」
「はい……」
ルーナの手を引き、立たせると軽く羽のように立ち上がった。
「ルーナ、俺と婚約しよう」
「……」
ルーナは無言でほろりと涙を流し泣き出した。
「……嫌か?」
「……違います、嬉しくて……来たばかりなのにこんなによくしてくださって……」
「出会ったばかりだが、俺はルーナと自分を信じる。君と一緒にいたいのだが……」
「カイル様の気持ち?」
「これからもルーナを好きになると思う。必ずだ」
「……私も、私もカイル様が好きです」
ぬいぐるみに顔をうずめて一生懸命言っているルーナが愛しいと思った。
ルーナをそっと抱き締めると抵抗することなく腕の中にいてくれた。
間にぬいぐるみがあり少し邪魔だな、とは思ったが、今はルーナが腕の中にいてくれるだけで良かった。