公爵騎士様は年下令嬢を溺愛する

第13話 銀髪と気付いてくれました



翌朝、私は白いドレッサーに座り、一生懸命髪をといていた。

カイル様が朝食に一緒に行こう。と寝る前に言って下さったからだ。
時間になるまでに急いでボサボサの髪をとくのに必死になっていると、ハンナさんがやってきた。

「おはようございます、もうお召しかえはお済みなんですね。すぐに髪を結いますね」
「おはようございます。すみません、お願いいたします」

艶のない髪をハンナさんがとかし、今日はポニーテールにしてくれた。

「お嬢様、今日は一緒にお買い物に行きませんか? カイル様と一緒では買いにくいものもありますでしょう」
「……お金は持ってないのです」
「お金は必要ありませんよ。カイル様にお任せするのですから」
「勝手には使えません」
「大丈夫です。先程カイル様から買い物に連れて行ってやれ。と言われたんですから」
「カイル様が?」
「お嬢様のことを気にかけているようですね。さぁ、できましたよ。カイル様が廊下でお待ちです」

お待ち? 待たせてはいけないわ。
そう思い、慌てて廊下に出ると、腕をくみ廊下の壁にもたれているカイル様がいた。

「おはようございます。お待たせしてすみません!」
「気にするな。支度はできたのか?」
「はい」
「では行こうか」

一緒に廊下を歩いていると、カイル様はゆっくり歩いているのか歩幅を合わせてくれていた。

「今日はハンナと買い物をして来なさい」
「はい、でもお金はいいのですか?」
「気にすることはない」
「……何か、カイル様のお使いとかすることがあれば言って下さい。私、何でもします」
「気にしなくていいのだぞ」
「でも申し訳なくて……」

カイル様は顔に手をあて考え込んでしまった。
困らせたと思った。

「……では、後で俺の部屋の花瓶の水換えをしてくれないか?」
「はい、絶対にします!」
「では頼もう」

朝食につくと、何故かヒューバート様がいた。

「おはようございます。ヒューバート様」
「おはようーー!」
「ヒューバートは夕べ泊まらせたんだ。今は騎士団の宿舎にいるが、ヒューバートは昔からここに住んでいるから、この邸に部屋もあるんだ。朝食の後は一緒に出勤する。さぁ、ルーナも座りなさい」

ヒューバート様は、どうやら古くからの友人らしい。
カイル様は、私の椅子を引いてくれて、彼を見ると目が合ってしまう。
こんな素敵な方に、昨夜、婚約をしようと言われたのが噓みたいだ。

今日は三人のテーブルになり、カイル様がいつもより近くに座り、嬉しかった。
横を見るとカイル様がいる。
にやけてしまいそうだった。

「ルーナさん、ポニーテールも可愛いですねー」
「そ、そんなことないです」
「団長もそう思うでしょう?」

カイル様はなんと言うか気になった。
カイル様をチラッと見ると、耳を赤くしていた。
言いたくないのだろう、と思いミルクティーに目をやった。

「……そうだな。ルーナの銀髪に似合っている」

一瞬、時が止まったかと思った。

「私が銀髪だと気付いていたんですか!?」

勢いよくカイル様を見るとちょっとびっくりしていた。

「あぁ、それは気付くだろう。ルーナの銀髪は夜空に映えて綺麗だった」

気付いてくれていた。
白髪ではなく、銀髪だと。
綺麗だと言ってくれた人は初めてだった。

「カイル様、ありがとうございます」
「どうしたんだ? 銀髪に何かあるのか?」
「気付いて下さり、綺麗だと誉めて下さったのはカイル様だけです」
「気付く?」
「白髪だと間違われていました」

カイル様が銀髪だと気付いてくれて、思わず髪に手をやり、ワサワサと触ってしまった。髪の色を気づいて下さるだけで、こんなに嬉しいなんて自分が不思議だった。それでも、口元が緩みそうだった。

朝食の後は、カイル様とヒューバート様を玄関まで見送った。

「いってらっしゃいませ。カイル様、ヒューバート様」
「行ってくる。定時には帰るからな」

カイル様を見送り、私はすぐにカイル様の部屋に行った。

「お花はどこかしら?」

見渡すとナイトテーブルにあった。
ちゃんと見える所に飾ってあるのが嬉しかった。

水を換えていると薔薇を増やしたくなった。

薔薇を増やすとお嫌かしら。

考えた末、庭師のマシューさんの所に行った。

「マシューさん、おはようございます」
「お嬢様、どうされました?」
「……あの良ければ、赤い薔薇を一つ頂けませんか?ダメでしょうか?」
「構いませんよ」

マシューさんは、嫌な顔せずに薔薇を一輪くれた。

「カイル様に差し上げるんですか?」
「はい、花瓶に赤い薔薇を足したくて」
「きっと喜びますよ。」
「本当ですか? 頑張って綺麗に飾ります」

マシューさんに摘んでもらった薔薇を大事に持っていき、赤い薔薇を追加して飾った。
明日も水換えをさせてくれるかしら?
カイル様の為に少しでも何かしたい。

そんな気持ちで一杯だった。




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