公爵騎士様は年下令嬢を溺愛する
第2話 帰りたくない騎士団長
騎士団の執務室で、仕事をしていると副団長のヒューバートがやってきた。
「団長、今日は早く帰る日じゃなかったのですか?」
「そうだったか?」
「また、婚約者候補の方が来る日だとぼやいていたじゃないですか」
「あぁ、だがどうせすぐに嫌になり実家に帰るだろう」
そう言うと、呆れたように薄い水色の髪をかき上げヒューバートは言う。
「……団長、顔はいいのにもったいないですよ」
「だが、好きにもなれない女とは結婚なんてできないな」
「もっと愛想よくしてくださいよ」
ヒューバートの言うとおり、俺は愛想がないのだろう。
だが、今まできた婚約者候補の女は、高慢で、うるさいと思うほど穏やかな気持ちになれなかった。
一生をこの女達と共に生きることが想像できなかった。
今度の娘も、伯爵令嬢だといっていた。
今までと同じだろう。
今日は帰るのが憂鬱だった。
そんなことを考えていながら仕事をしていると、いつの間にか遅くなってしまった。
今日終わらせないといけない仕事もないが、自分の邸に帰るのが憂鬱だった。
「……他に仕事はないか?」
「今日しないといけない仕事は、もうありませんよ」
ヒューバートにはますます呆れられてしまっている。
「仕方ない。これが終われば帰るか……」
「そうしてください。オーレンさんも待ってますよ」
そして、最後のサインを終わらせ、ため息混じりで邸への帰路についた。