公爵騎士様は年下令嬢を溺愛する
第3話 初対面
部屋で、窓の外をボーッと見ていると、執事のオーレンさんがやってきた。
「カイル様がご帰宅されます。お出迎えされますか?」
「はい、ぜひ行きます」
そのまま行こうとすると、オーレンさんは私をじろじろ見て、聞いてきた。
「お嬢様、失礼ですがお召しかえになられては? その服は来たときの服です。食事にもなりますので、ドレスにお召しかえされた方がよろしいのでは?」
オーレンさんの指摘に自分が恥ずかしくなった。
「……すみません、ドレスはないのです」
「…ドレスがない? ご自宅から忘れたのですか? 使いの者にとりに行かせましょうか?」
「すみません、自宅にもないですし、自宅には帰れません」
オーレンさんはきっと困って、私を見下した目で見ていると思う。
そう思うと、顔が上げれず、スカートをギュッと握りしめ、下を向くしかなかった。
自分はなんて惨めなんだろう。
こんな大きな邸の方と釣り合う訳もないし、きっとすぐに追い出されるわ。
そう思うと泣くのを我慢するだけで精一杯だった。
「……失礼しました。では、私と一緒にカイル様をお迎えしましょう」
「すみません……」
オーレンさんについて玄関の大階段の下で待っていると、玄関のドアが開き一人の男性が入ってきた。
背は高く、綺麗な夜のような黒髪にビックリした。
公爵様で、騎士団長様と言うからもっと年上の方と思っていたが、思っていた方と違った。
「お帰りなさいませ、カイル様」
オーレンさんが頭を下げたのを見て、私も慌てて下げた。
「今帰った。そちらの娘は? 候補の方は部屋にいるのか?」
カイル様は私が候補の方と気付かなかった。
「カイル様、こちらのお嬢様が婚約者候補です」
「……君が?」
「は、初めまして、ルーナ・ドワイスです」
カイル様は私を見て、驚いた顔をしていた。
それもそうだ。こんな素敵な方に私のようなみすぼらしい令嬢がくるとは思わないと思う。
「とりあえず、食事にしよう。疲れているから、服はこのまま食べる」
「それがよろしいかと」
カイル様の後ろをついて、食堂に行くと綺麗な銀食器に料理が並べられていた。
向かい合わせに座り食事が始まると、私達二人は無言のまま食べ始めた。
あまりの無言に、カイル様が話し掛けてきたが私には上手く話せなかった。
「……随分つまらなそうだな。君はいくつなんだ?」
「……もうすぐで、16歳になります。」
「俺は26歳だ。嫁ぐのに抵抗はないのか? 伯爵家はなんと言っているんだ?」
「……わかりません……」
カイル様が困った顔をして、私はまた下を向いてしまった。
食事もこんなに食べられず、進まなかった。
「……わかった。もう帰りなさい」
ため息交じりでそう言われた。
1日も立たず、この邸から追い出される。
帰る家もない。
でも、カイル様が出ていけと言うなら、いられない。
私は席を立ち、頭を下げた。
「……ご迷惑おかけしてすみませんでした。お料理美味しかったです。失礼いたします」
そのまま、カイル様の顔を見ずに私は邸を後にした。