この政略結婚に、甘い蜜を
何度も何度も頭を下げる傑を華恋は止め、フフッと笑い声が漏れてしまう。過去の一番傷付いたことが解決したからだろうか、自然と笑みが溢れていくのだ。

その後は、コーヒーを注文して飲んだ。傑がどこか楽しそうに大学のこと、サークルのこと、最近あった出来事などを話す。それに華恋は相槌を打ち、微笑む。まるで、告白をする前の関係に一気に戻れたように感じた。

コーヒーを飲み終えた後、華恋がお金を払おうとすると傑が止める。

「俺が引き止めたんやから、俺が払う」

「いいよ、別に」

「けど……」

「いいから」

傑が財布を取り出す前に華恋はお金を支払い、男性に「ごちそうさまでした」と言い、喫茶店を出る。零をこれ以上家で待たせるわけにはいかない。

「花籠、ずっと気になっとったんやけど……」

喫茶店の外で、華恋は傑に声をかけられる。彼の声にはどこか、恐怖が入り混じっているような気がした。
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