この政略結婚に、甘い蜜を

9、沈黙の束縛

次の日、華恋が眠りから覚めた華恋がゆっくりと目を開けると、そこにあったのはまるで異国の王子と言っても過言ではないほどの美しい顔立ちをした零の顔が目の前にあった。

「えっ！？れ、零さん！？」

零は頬杖をつき、華恋をジッと見つめている。だが、零は出張に行っているはずだ。華恋は驚き、飛び起きる。

「どうしてここに？今日はまだ出張のはずでは……」

「実は予定より早く商談が進んでね、昨晩の十一時過ぎに帰ってきたんだ」

にこやかな笑みを浮かべる零を見て、華恋は恥ずかしさを不意に覚えて布団の中に潜り込む。

お酒のせいで汗をかき、体が少しベタついている。メイクもほとんど落とさずに寝てしまったため、今は顔が汚れてしまっている状態だ。おまけに今はパジャマではなく、赤いワンピース姿である。

（せめて、パジャマには着替えるべきだったわ……）

零に酷くだらしない姿を見られることが、華恋は何故か穴があったら入りたいほど恥ずかしいと思っている。傑と話が弾んだとはいえ、あんなにお酒を飲むんじゃなかったと後悔していると、「華恋？」と声をかけられる。