この政略結婚に、甘い蜜を
「何で亀みたいなことをしてるの?」

不思議そうに零は訊ねながら布団をツンツンと指で突いてくる。華恋は布団を握り締め、「見られたくないからです」と言った。傑とは仲直りをしたはずなのに、零に嫌われるとなるとこんなにも不安になってしまう。

「もう八時近いし、起きようよ。有給取ったから二人でお出かけしたい。布団から出てほしいなぁ……」

子どもをあやすように優しく背中を叩かれ、華恋の胸がギュッと抱き締められたかのように苦しくなる。正直、シャワーを浴びたいところなのだが、零がいると出て行きたくないのが本音だ。

「……零さん、朝ご飯の準備をお願いしてもいいですか?その間にシャワーを浴びたいので」

「わかった。ちゃんと起きてね?」

零はそう優しく言った後、華恋から離れていく。布団の中にいる華恋は、足音が遠ざかって寝室のドアが閉められた音を聞いた後、ゆっくりと布団から出た。

「早くシャワーを浴びなきゃ……」
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