この政略結婚に、甘い蜜を

クローゼットからブラウスとスカートを出し、華恋はお風呂場へと向かう。廊下を歩いていると、キッチンで何かを焼く音と香ばしい匂いが漂ってきた。途端に、華恋のお腹が空腹を訴え始める。

「朝ご飯、何を作ってくれているんだろう……」

胸を弾ませながら華恋はお風呂場でワンピースを脱いで洗濯機に入れ、シャワーを浴びる。メイクがお湯で洗い流され、汗ばんだ体を綺麗にしていく。

「さっぱりした」

ブラウスとスカートを履き、洗濯機を回す。すると脱衣所のドアが開き、「朝ご飯できたよ」とエプロンをつけた零が顔を出す。

「ありがとうございます！」

華恋がお礼を言ってリビングに向かおうとすると、その腕を不意に零に掴まれる。華恋が振り向けば、そこには無表情の零がいた。

「……ねえ」

どこか声がいつもより低く聞こえる。華恋は緊張を覚えながら、何とか「はい」と返すことができた。

「あんな派手なワンピースを着て、どこに行ってたの？誰かと会ってた？」