この政略結婚に、甘い蜜を
零のダークブラウンの両目は、まるで氷のような冷たさを感じる。ゾクリと寒気が華恋の体に走った。

「ねえ、答えて?」

「えっと……昨日は、バーに行ってみたいなって不意に思って一人で出かけました。バーっておしゃれな雰囲気なので、あのワンピースを着て行ったんです。飲み過ぎて、家に帰った後あのまま寝てしまったので、今度からは気をつけないといけませんね」

華恋は咄嗟に嘘をついてしまった。今の零の前で「男友達と行った」などと言えば、どうなるかわからない。

緊張と恐怖の混ざった心で華恋が零を見つめると、その表情は穏やかなものに変わる。

「そっか。なら、今度からバーに行く時は僕も一緒に行くよ。あんなセクシーなワンピースを着てバーに一人なんて、「ナンパしてください」って言ってるようなものだから」

「ご心配おかけして、すみません」

華恋は頭を軽く下げ、朝ご飯を食べるためにリビングへと向かう。うまく誤魔化せたと華恋はホッとしていたのだが、華恋の後ろで零は冷たい目をしていた。
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