この政略結婚に、甘い蜜を



朝ご飯を食べ、皿洗いや洗濯などを済ませた後、華恋は零の車の助手席に座っていた。車で出かけるのだ。

「デート、久しぶりだからわくわくするね」

零がそう言いながらエンジンをかける。華恋の好きなアーティストの歌が車内に流れ、零はその歌を鼻歌で歌いながらアクセルを踏んでいく。

「あの、どちらに出かけるんですか?」

「華恋が好きそうなところと、あとは僕の買い物に付き合ってくれたら嬉しいな」

ニコリと笑う彼があんなに恐ろしい顔を見せたなど、信じられない。華恋は「わかりました」と返事を返す。

チラリと零を見れば、運転に集中しているため真剣な目になっており、その表情がどこかかっこいいと華恋は思ってしまう。朝、恐怖を感じたのがまるで嘘のようだ。

「どうしたの?ジッと見て」

赤信号のため車が止まり、零が華恋の方を向く。その優しい表情に胸が高鳴り、華恋は「な、何でもありません!」と慌てて言い、窓の外に目を向ける。
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