この政略結婚に、甘い蜜を
だが、車という狭い空間の中では互いの呼吸や物音が目を閉じていても聞こえてくる。隣から感じる熱、そして物音に緊張を覚えながら華恋は車に揺られていた。

一時間ほどで到着したのは、ハーブガーデンだった。そこにはサルビアがたくさん咲いており、花畑となっている。

「わあ!素敵……」

「綺麗でしょ?SNSで見かけて、華恋と一緒に行きたいなって思ったんだ」

赤や紫の美しい花が咲き誇り、華恋は何枚も写真を撮っていく。はしゃぐ華恋を見て、零は微笑む。

「一緒に写真撮ろう?」

零が自分のスマホを出し、華恋に声をかける。華恋は水族館のことを思い出して頬を赤く染めながら、ゆっくりと頷く。

華恋の腰に腕が回され、零の方へと引き寄せられる。二人の距離が近くなり、零は幸せそうに微笑んで、華恋は恥ずかしさから耳まで赤くなっていく。胸の高鳴りが止まず、心臓が壊れてしまいそうだと華恋は思う。

サルビアの花畑をバックに、シャッターが切られる。満足そうに零は頷いた。
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