この政略結婚に、甘い蜜を
「うん、華恋との思い出の写真がまた増えた」

「やっぱり、恥ずかしいです……」

嬉しそうにする零の横で、華恋は真っ赤な顔を両手で覆う。きっと、何度写真を一緒に撮ってもこうして恥じらいを覚えるのだろう。

「フフッ。写真を撮ると恥ずかしがる可愛い華恋が見えるから好き」

頭を優しく撫でられ、華恋は「揶揄わないでください」と言いながら目を閉じる。恥ずかしいという気持ちの中に、幸せと胸の高鳴りがあった。



サルビアをじっくり楽しんだ後、華恋は零が買いたいものを一緒に見に行くことになった。だが、車が止まった場所を見て華恋は固まってしまう。

「零さん、ここに入るんですか?」

「そうだよ。ほら、行こう」

ずっと華恋が立ち尽くしていると、零に手を引かれて歩かされる。そして、高級ジュエリーショップのドアを開けた。

「いらっしゃいませ」

黒いスーツを着た店員がニコリと微笑み、近付いてくる。自分のアクセサリーを買いに来たのだろうか、そう華恋は思っていたのだが、零は華恋の肩に触れながら言う。
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