この政略結婚に、甘い蜜を
メッシュの入った髪に、高身長のその男性はブランド物のスーツを着こなし、顔立ちは俳優のように整っている。そして、その手には赤いバラの花束があった。
『お前みたいなドブス、誰も振り向いてくれるわけないやろ!』
ふと、過去のことを思い出して恐怖が華恋の中に込み上げる。そんな中、男性はふわりと華恋に笑いかけ、花束を差し出して言った。
「初めまして、君の夫になる鍵宮零(かぎみやれい)です」
「夫?」
花束を手渡され、頭がさらに混乱する華恋の横で「お姉ちゃん、いいな〜!こんなイケメンと結婚できて」といつの間に家に入って来たのか花音が羨ましげに言う。
「零くんは華恋より五歳歳上の鍵宮グループの次男で、とても優秀な人だ。僕が引退した後に会社を引っ張って行ってもらうんだ」
ニコニコと笑う父を見て、華恋は政略結婚をさせられるのだと悟った。
父一人で会社を大きくしたとは言え、いつまでも父が社長でいられるわけではない。いずれは誰かに会社を継いでもらわなくてはならないのだが、華恋も花音も会社を継ぐ気はなく、それならば婿養子を取ってその人に会社を継がせるしかない。この結婚は華恋に拒否権がないのだ。
『お前みたいなドブス、誰も振り向いてくれるわけないやろ!』
ふと、過去のことを思い出して恐怖が華恋の中に込み上げる。そんな中、男性はふわりと華恋に笑いかけ、花束を差し出して言った。
「初めまして、君の夫になる鍵宮零(かぎみやれい)です」
「夫?」
花束を手渡され、頭がさらに混乱する華恋の横で「お姉ちゃん、いいな〜!こんなイケメンと結婚できて」といつの間に家に入って来たのか花音が羨ましげに言う。
「零くんは華恋より五歳歳上の鍵宮グループの次男で、とても優秀な人だ。僕が引退した後に会社を引っ張って行ってもらうんだ」
ニコニコと笑う父を見て、華恋は政略結婚をさせられるのだと悟った。
父一人で会社を大きくしたとは言え、いつまでも父が社長でいられるわけではない。いずれは誰かに会社を継いでもらわなくてはならないのだが、華恋も花音も会社を継ぐ気はなく、それならば婿養子を取ってその人に会社を継がせるしかない。この結婚は華恋に拒否権がないのだ。