この政略結婚に、甘い蜜を
ヒソヒソと聞こえてくる女性客たちの言葉を聞きながら、華恋と零は席に案内される。お冷やとメニュー表を渡された。

「ご注文がお決まりになりましたら、お呼びください」

ペコリと軽く頭を下げて去っていった女性店員の頬は、どこか赤く染まっていた。それを見ていて、華恋の心はどこかモヤモヤした気持ちを覚える。零のことを他の人に見てほしくない、そう何故か思ってしまうのだ。

（何なの、この気持ち……）

何かの病気なのだろうか、と不安を覚えてしまう。そんな華恋の隣で、零はメニュー表を開けていた。

「華恋、何食べたい？」

髪を耳にかけ、ふわりと微笑む零の姿に多くの人たちが顔を赤く染める。華恋もその一人だ。心臓がいつも以上にうるさい。

「華恋？」

ジッと零に見つめられ、華恋は慌てて「えっと、どれもおいしそうですね」と言いながらメニュー表の方に視線を向ける。恥ずかしさを感じていた華恋は、彼が一瞬驚いた後に幸せそうな顔をしたなど、気付くことはなかった。
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