この政略結婚に、甘い蜜を
「声が聞きたかった……?」

何故、彼がそう言うのかがわからない。二人の関係は友達、そう華恋は思っている。

(声が聞きたいだなんて、まるで言い方は恋愛ドラマの主人公みたい……)

次に会う日を約束し、華恋は電話を切る。どこか胸が騒ついたものの、華恋は「気のせいよね」と呟き、カフェの中へと戻った。



カフェの中、零はジッと窓の外を見つめている。その視線の先には、どこか楽しそうな表情の華恋があり、口元がパクパクと動いている。

「来週土曜日、渋谷で二人で遊ぶんだ……。へぇ……」

唇の形から会話を読み取った零の表情は、華恋と一口交換をした時とは真逆の冷たいものになっている。そんな目で見つめられているとは、華恋は気付いていないのだろう。

「五百雀か……」

零は少し考えた後、スマホを取り出す。そして、電話をするために席を立った。



次の週の土曜日、傑と遊びに行くと約束した日がやってくる。今日は零は出張の日である。

「そろそろ行くね」

「わかりました」
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