この政略結婚に、甘い蜜を
玄関に向かう零に後を華恋は歩く。零を見送るためだ。

「行ってきます」

零にふわりと抱き締められ、華恋の頬がほんのりと赤く染まる。華恋が恥ずかしさを自覚すると、まるで心の中を見透かされたようにさらに強く抱き締められ、心拍数が上がっていく。

「れ、零さん……」

胸板を軽く押したところで、男性の力には敵わない。華恋が震えながら耐えていると、髪に不思議な感触が一瞬落とされる。

「えっ……」

「これで一日頑張れる」

ニッと零が笑った顔を見て、先ほど頭にキスを落とされたのだと華恋は理解した。耳まで赤く染まっていき、胸が苦しいほど動いていく。

「可愛い……。行ってきます」

「いっ、行ってらっしゃいです!」

頭を軽く撫で、零はドアを開けて出て行く。華恋は、胸の高鳴りのせいでしばらくその場から動けなくなってしまう。

(胸がドキドキするって自覚してから、自分がどんどんおかしくなってるような気がする……)
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