この政略結婚に、甘い蜜を
あの日から華恋は恋をすることはなく、今まで恋人がいたことは一人もない。だが、あまりにも突然に決められたことに戸惑いと悲しみが隠せなかった。

(お父さんは会社を継いでくれる人がほしくて、彼は次男だから自分のグループを継げない。……この結婚に愛はない)

悲しみに浸る華恋はニコリと笑う零に抱き寄せられ、零が両親に何かを言い、両親はこれでもかと喜んでいる。

だが、華恋の耳にはその会話は聞こえてくることはなかった。



その後、華恋は零の車で、花音と両親は運転手付きの車で華恋の誕生日兼結婚のお祝いをするためのレストランに向かうことになった。

零はニコニコと笑いながら話しかけてくるものの、華恋はうまく話すことができず、どこか重い空気のままレストランに着く。そこは、都内でも指折りの高級フレンチのお店だった。

「二人はこれから結婚するんだから、二人で食べなさい」

母に微笑まれ、華恋は零と共に家族からは離れたテーブルに案内される。窓から美しい夜景が見渡すことができる席だ。
< 13 / 186 >

この作品をシェア

pagetop