この政略結婚に、甘い蜜を
高級レストランのフレンチに華恋は最初は緊張を覚えていたものの、おいしい料理に心はすっかり解けていた。そして、デザートのフランボワーズのムースを華恋が目を輝かせながら口にしていると、傑が俯きがちに口を開く。

「なぁ、今からどうする?」

「どうするって?」

華恋が訊ねると傑は顔を上げる。だが、その目を見て華恋の背筋に寒気が走る。まるで傑の目は、狩りをする前の猛獣のようにギラギラと輝いている。

いつの間にか、目の前に座っていたはずの傑は華恋の隣に移動しており、肩に傑の腕が回される。華恋の体が小さく跳ねた。

「い、五百雀くん?」

驚く華恋に傑がどんどん近付いてくる。逃げようとすると、傑に腰を抱かれてしまい動きを封じられる。

「や、やめて……」

華恋が手で傑の胸板を押すと、その手をスルリと取られてしまう。蕩けるような目で傑は言った。

「めっちゃ好きや、お前のこと。ガキの頃からずっと。……あの時振ってしもたこと、後悔しとる」
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