この政略結婚に、甘い蜜を
「顔、すごく真っ赤。可愛い……」

そう言う零の頬も赤く染まっている。零の頭にもきっと昨夜のことが浮かんでいるのだろう。

華恋の中で「好き」という気持ちがまた溢れ、胸が苦しいほど高鳴っていく。一度自覚してしまった想いは、止めることはできない。零を見るたび、零と話すたび、零に触れられるたび、溢れていく。

「ご、ごちそうさまでした!もう仕事に行かないといけないので!」

華恋は立ち上がり、食べ終わった皿をシンクヘと運んで急いで洗う。顔だけでなく、体全体がどこか熱い。恥ずかしくて零の方を見ることができなかった。

身支度やメイクを済ませ、かばんを手にする。玄関まで来ると、零が見送りに来てくれた。

「行ってらっしゃい」

「いっ、行ってきます」

手を振りながら微笑む零を見て、また華恋の中で恋が育っていくのだ。



ネイルサロンが開店する時間になると、予約をしていたお客さんがやってくる。お客さんを席へと案内し、お客さんが望むようにネイルアートを施していくのだ。

「今度、彼の誕生日なんですよぉ〜。プレゼントどうしようか迷ってて〜」
< 139 / 186 >

この作品をシェア

pagetop