この政略結婚に、甘い蜜を
お客さんにニヤニヤされ、どんな人なのかを聞かれる。華恋は察しがいい人って恐ろしいな、と思いながら零を頭に浮かべた。途端に、仕事中だというのに胸が高鳴っていくのだ。

「その……とても優しくて、大人びていて、私のことを考えてくれて、私にはとてももったいない人、です……」

「理想の彼って感じですね〜!」

お客さんは頬を赤く染めて喜び、馴れ初めやデートのエピソードなどを聞きたいと言い始める。それに苦笑しつつ、華恋は話せるところを話していき、零のことがこんなにも好きなんだと改めて自覚するのだった。



仕事からの帰り道、華恋は少し疲れたなと思いながら歩いていた。来てくれたお客さん、そしてお店を経営している従姉妹にまで零のことを聞かれたためだ。

「女の子って恋バナ好きよね……」

話していて、恥ずかしいという気持ちもあった。だが、楽しいという気持ちや彼のことを思い出して胸がギュッと音を立てたのは事実である。
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