この政略結婚に、甘い蜜を
12、零のしたかったこと
車の中、華恋の耳にはしゃぐ子どもたちの声や鳥が飛んでいく音が聞こえてくる。狭い車内の中、華恋は真剣な顔をする龍羽から目を逸らさずにいた。

「……一つ聞きたいんだけど、華恋さんがプレゼントの相談をするってことは、零のことを好きになったって解釈していいのかな?」

好きになった、そう他人に言われると心の内側からジワジワと恥ずかしさが込み上げてきて華恋の頬を赤く染めていく。華恋が「はい」と小声で言いながら頷くと、龍羽はホッとした顔を見せた。

「いや、結婚式に参加した時やパーティーで会った時は、華恋さんは零に対して好きはもちろん嫌いといった感情も見えなくて、少し心配だったんだ。結婚は一生を共にすると誓うことだから、弟には幸せになってほしいからね」

龍羽はニコリと微笑み、華恋ももう一度頷く。好きと自覚したのは最近だ。だからこそ、この想いを早く伝えたい。華恋はスカートを握り締め、口を開く。

「お義兄さん、零さんは何かがほしいと言っていませんでしたか?零さんの好みなども教えてほしいです」
< 145 / 186 >

この作品をシェア

pagetop