この政略結婚に、甘い蜜を
「ありがとうございます!」

デザートがあることに華恋の顔に笑みが浮かぶ。すると、微笑んでいた零の顔から表情が消えた。零は華恋に顔を近付け、犬のように匂いを嗅いでいる。

「れ、零さん?」

「……兄さんの匂いがする。兄さんと会ったの?」

零の目は、傑に無理やりキスをされそうになったあの日のように暗い。華恋にゾクリと寒気が走った。

「仕事帰りに偶然会ったんです。家まで送ると言ってくれたので、そのお言葉に甘えました」

華恋が緊張しながら言うと、零は「そっか」と言い俯く。数十秒後、顔を上げた零はいつも通りの零に戻っていた。

「ごめん。兄さんと二人でいたことに嫉妬しちゃって……。本当にごめんね」

「いえ。私の方こそ、心配をかけてしまってすみません」

零は着替えてくると言い、リビングを出て行く。華恋はホッとしつつ、嫉妬してくれたことに対して胸を高鳴らせるのだった。



二週間後、華恋と龍羽は零が結婚式を挙げたいと言っていた結婚式場へと向かう。零は仕事だ。
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