この政略結婚に、甘い蜜を
零がポケットから小さな箱を取り出す。そこにあったのは、ダイヤモンドの入った綺麗な指輪だった。その指輪は華恋の左手の薬指に嵌められ、煌めく。

「とても綺麗だ」

そう言って微笑む零に、華恋はどう返したらいいかわからず、黙って俯く。そこへコースメニューの最初の料理が運ばれてきた。

「食べようか」

「……はい」

豪華な料理が次々と運ばれる中、華恋は黙々とナイフとフォークを動かして料理を食べる。零との間に会話はなく、周りの雑音がうるさいくらいに感じる。

「こちら、デザートの洋梨のケーキになります」

店員が洋梨のケーキを零の前に置く。だが、華恋の前には苺のムースが置かれた。

「苺、好きだったよね?」

ニコリと笑う零に言われ、華恋は頷く。だが、何故初対面の男性が自分の好みを知っているのかと少し疑問と恐怖を抱いていた。

二十一歳の誕生プレゼントは、結婚する旦那という華恋にとって最悪なものとなった。






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